クリスマスのイルミネーションに彩られた海鳴駅を出て歩いて数分。
喫茶翠屋の前では、店のエプロンをしたブロンドとシルバーの髪をした2人の女性が、クリスマスケーキを予約した客にケーキの引き渡しをしていた。
引き取りのピークを過ぎ、机に残るケーキの箱は少ない。
「相変わらずの人気だね、桃子のケーキは」
「そうですね。駅の反対側とかにもケーキ屋さんとか増えましたけど、みなさん翠屋の、桃子さんのケーキが好きなんですね」
シルバーの髪の女性の言葉にブロンドの髪の女性がうなずく。
「嬉しいよね、好きな人たちが作るものが認められるのって」
「そうですね」
そこに、店の中から男性店員が顔を出す。
「二人とも時間だから上がって」
「「ありがとう」」
そう言うと、男性と入れ替わりに二人は店内へと入って行った。
「あっお兄ちゃん、周りが寒々しく感じるので、コートを着てください」すぐさま店内からコートを手にした少女が
外に出た男性に向かって声を掛ける。
「あぁ、ありがとう。これだけ寒いと、もしかしたら雪が降るかも知れんな」
「ホワイトクリスマスかぁ。くーちゃんが喜びそう」
「そうだな。ほら、寒いから中に入っておきなさい」
「はーい」
すぐさま少女は店内に戻る。
「雪か……」
そう呟くと、男性は右膝を一瞥してから空を見上げた。