左腕に柔らかなものの感触を感じて、エリオは目を覚ます。
左に目をやると、そこには自分の腕を抱き締めてキャロが眠っている。
滑らかな肩を隠すように、シルクのような艶やかな髪が緩やかに流れ落ちている。
エリオはキャロの寝顔を眺めようと、キャロが起きないように注意しながら体勢を変えようとした。
その拍子にシーツがずれて、キャロの肢体が夜明けの光にさらされて、エリオの視界に入ってくる。
「うっ」
何度も肌を重ね合って、見慣れているはずのキャロの裸に、エリオは精神的ダメージを受ける。
これがヴァイスやユーノぐらいのベテランになると、同じような状況でも『相変わらず綺麗だ』などと思いながら、何事もなかったようにシーツを掛けなおすのだが、そのレベルに達するには、まだまだエリオは経験不足だった。
(落ち着け、落ち着くんだ)
エリオはキャロから視線を外して、必死に落ち着こうとする。しかし神はさらなる試練をエリオに与えるのだった。
「うぅん……エリオくぅん、だーいすき……うにゅぅ……」
そんな寝言を言いながら、キャロはエリオに抱き付いて来た。
柔らかな双丘が、エリオの腕にさらに強く押しつけられて歪む。

 プチプチプチ…

エリオの中で何かが切れてゆく音がする。
キャロの腕を上手に外すと、足音を消して部屋から出て行き、エリオは前屈みでトイレへ駆け込む。

‐約3分後‐

「あっ、危なかったぁ……」
エリオは暴発ギリギリで処理に成功する。
(あー、ヴァイスさんが知ったら絶対にからかわれるよ)
処理した紙を流すと、エリオはトイレから出て寝室に戻る。
シーツでくるりと身を包んで寝ているキャロを確認すると、エリオはベッドの周りに散乱している自分のパジャマを身に着け、キャロのパジャマをベッドサイドのテーブルに片付ける。
そして、薄手の羽織を着るとキャロのドレッサーの椅子に座る。
微笑むような表情を見せるキャロの寝顔を眺めて、エリオはこれからやらなくてはいけない事を考えていた。
(まずはフェイトさんに連絡して、直接会って話を聞いてもらって……)
そこまで考えて、エリオはキャロをみつめる。
「……やっぱりお給料3月分ぐらいの指輪を贈らないとね」
そうつぶやくと、エリオは朝食を準備しにキッチンへ向かうのだった。
 

inserted by FC2 system